アジシオは、料理の味を手軽に整える便利な調味料ですが、「体に悪いのでは?」と気になる人も多いのではないでしょうか。本記事では、アジシオの成分や安全性、添加物の影響、さらに健康的な塩選びのポイントまで、わかりやすく解説します。正しい情報を知り、毎日の食生活に役立てましょう。
1. アジシオとはどんな調味料?
アジシオは、うま味と塩気を一度に加えられる便利な調味塩として、家庭の食卓で長年親しまれてきました。
1.1 アジシオの基本情報、人気の理由
アジシオは、味の素株式会社が1958年に発売した「うま味調味料入りの食塩」で、正式には登録商標として守られている商品名です。
食塩にグルタミン酸ナトリウム(MSG)などのうま味成分を加え、料理に深みとコクを与えるのが特徴。さらさらとした質感でふりかけやすく、料理初心者や時短調理を求める家庭に長年愛用されています。
たとえば、焼き魚、ゆで卵、漬物、冷ややっこなどにひとふりするだけで、塩味とうま味が一度に加わり、味が“決まりやすい”のが人気の理由です。
ここで注意したいのが、「アジシオ」という名称はあくまで味の素社の商品に限られる点です。他社が製造する似たタイプの調味塩(食塩+うま味調味料)は、市場に複数存在しますが、それらは「アジシオ風」や「うま味入り塩」と呼ばれることはあっても、「アジシオ」という商品名を使用することはできません。これは「アジシオ」が商標登録されているためで、言い換えると“アジシオは味の素だけのブランド”ということになります。
このように、アジシオは単なる塩ではなく、「味の素ブランドが長年培った品質と味わい」の象徴ともいえる調味料なのです。

1.2 含まれる原材料と、添加物の特徴
アジシオの主な原材料は以下の通りです。
- 食塩(日本の海水由来)
- グルタミン酸ナトリウム(MSG)
- 他、滑りを良くする(粉末が固まらずサラサラと出やすくするため)微量の添加物
アジシオのうま味成分であるグルタミン酸ナトリウム(MSG)は、昆布などに含まれる天然のうま味成分を科学的に抽出・精製した食品添加物です。うま味の相乗効果で料理をおいしくするため、加工食品や冷凍食品でもよく使われています。
2. アジシオが体に悪いと言われる理由
アジシオは便利でおいしい反面、「体に悪い」と不安に思う声もあります。その理由を具体的に見ていきましょう。

2.1 グルタミン酸ナトリウム(MSG)の影響
過去にはグルタミン酸ナトリウム(MSG)の摂取によって「中華料理症候群(Chinese Restaurant Syndrome)」と呼ばれる症状が起きたと報告されたことがあります。頭痛やしびれなどの一時的な不快感が主な症状です。
ただし、その後の研究で通常の摂取量では健康への明確な悪影響は確認されておらず、科学的根拠に乏しいという結論が出ています。
現在ではWHO(世界保健機関)やFAO(国連食糧農業機関)、FDA(アメリカ食品医薬品局)なども、MSGを安全と認めてはいます。
2.2 味覚への影響と味付けの変化
MSGは強いうま味を持つため、使いすぎると「自然な味が物足りなくなる」リスクがあります。加工食品に慣れすぎると、素材そのものの味を感じにくくなり、より濃い味を求めるようになりがちです。
結果として、塩分や油分、糖分を摂りすぎる食習慣になりやすく、生活習慣病のリスクが高まることにもつながります。
2.3 過剰摂取による健康リスク
アジシオの食塩相当量は100g中約91.5gと、かなり高い塩分濃度です。つまり「ほとんどが塩」でできていると言っても過言ではありません。
ここで注意したいのは、「医者が高血圧の患者に“塩分を控えてください”と指導する際、この“塩分”にはアジシオのような調味料も含まれている」という点です。つまり、アジシオも控えるべき「塩分食品」としてカウントされるのです。
アジシオはうま味によって味がまろやかに感じられるため、塩辛さをあまり感じず、ついつい使いすぎてしまいがちですが、それが結果として塩分過多の原因になっている可能性があります。
成人男性は1日7.5g未満、女性は6.5g未満の塩分摂取が推奨されています。(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」)
出典:厚生労働省ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 健康 > 栄養・食育対策 > 日本人の食事摂取基準
3. 科学的な視点から見た安全性
不安を感じる人が多い添加物ですが、科学的にはどう評価されているのでしょうか。
3.1 公的機関による安全性の評価
グルタミン酸ナトリウム(MSG)は、以下のような国際機関から「通常の使用であれば安全」と評価されています。
- 世界保健機関(WHO)
- 欧州食品安全機関(EFSA)
- アメリカ食品医薬品局(FDA)
- 日本食品安全委員会
これらの評価では、一般的な摂取量で健康被害が起こるリスクは極めて低いとされており、現在の日本の食品添加物制度においても適切に管理されています。
3.2 通常の使用量での健康への影響
グルタミン酸ナトリウム(MSG)は、過去にさまざまな誤解を受けてきましたが、現在では多くの研究で「通常の使用量であれば健康に問題ない」とされています。
実際、日本食品安全委員会やWHO(世界保健機関)、EFSA(欧州食品安全機関)などの評価では、MSGの一日許容摂取量(ADI)を設定する必要がないほど安全性が高いとされています。これは、日常的に食品に使われる量では健康への悪影響が極めて低いことを意味します。
たとえば、アジシオ1gあたりに含まれるMSGの量は、おおよそ0.1~0.3g程度と考えられます。仮に一日の食事で合計3gのアジシオを使用したとしても、MSGの摂取量は最大でも約1g未満。この程度の量であれば、国際的な基準でも「問題なし」とされています。
また、MSGは体内でグルタミン酸というアミノ酸に分解され、これは肉や魚、野菜などの自然な食品にも含まれている成分です。つまり、MSG自体が不自然な物質というわけではなく、通常の食事と同じように体に取り込まれるという特徴があります。
ただし、体質によっては極端な大量摂取時に軽い頭痛やのぼせを感じるケースもあるため、「美味しいから」と無意識に多用しないよう注意するのが望ましいでしょう。
4. 健康的な塩の選び方
同じ「塩」でも、選び方次第で健康への影響は大きく異なります。健康志向の方はぜひ、以下のポイントを参考にしてみてください。
4.1 天然塩と、精製塩の違い
塩には「精製塩」と「天然塩(天日塩を含む)」の2種類があります。
種類 | ナトリウム量 | 特徴 |
---|---|---|
精製塩 | 約99% | ミネラルがほとんど含まれない |
天然塩 | 約70% | カリウム・マグネシウム・カルシウムなどのミネラルが含まれる |
天然塩には、ナトリウムを排出する作用のあるカリウムが含まれており、結果的に高血圧のリスクを軽減する可能性があります。つまり、「同じ塩分量でも体への負担が異なる」ことになるのです。
4.2 ミネラル豊富な塩の選び方
塩選びのポイントは以下の通りです。
- 原材料が「海水」「岩塩」など自然由来
- 「にがり成分」や「マグネシウム含有」などの表示がある
- 製法に「天日干し」「平釜」などの記載がある
これらはパッケージに記載されているため、購入前にチェックすることでより良い選択が可能です。
こちらの塩選びに関する記事も、ぜひ。
4.3 無添加の調味料を使った代替方法
アジシオの代わりに、以下のような天然素材を使った調味料もおすすめです。
- 出汁(昆布・かつお節・干し椎茸など)
- 天然塩(ミネラル含有)
- 無添加の味噌・醤油
これらを日常的に使うことで、うま味を補いながら添加物や塩分を控える食生活が実現できます。

5. まとめ:アジシオとの上手な付き合い方
アジシオはとても便利な調味料ですが、使い方を誤ると塩分や味覚の偏りといったリスクをはらんでいます。安全に使うには、以下のポイントが大切です。

5.1 適量使用の重要性
グルタミン酸ナトリウム(MSG)や塩分は「摂りすぎなければ問題ない」成分です。アジシオも適量であれば日常生活の中で無理なく活用できます。
むしろ「摂りすぎない仕組みを作ること」が長く健康を保つ秘訣です。
5.2 食生活全体のバランスを考える
塩分や添加物を控えたいと思ったとき、最も重要なのは、「アジシオだけを悪者にしない」こと。すべての調味料や食材には、それぞれメリットとデメリットがあり、使い方や摂り方によってその影響は大きく変わります。
「どう使うか」「どのくらい使うか」が本質です。天然素材を取り入れたり、調味料を工夫することで、塩分や添加物を抑えつつも、満足できる味を作ることは十分に可能です。
食生活全体のバランスを整えるには、以下のような視点が役立ちます:
- 野菜や海藻、発酵食品などを毎日の食事に取り入れる
- 加工食品や外食の頻度を見直す
- 自然なうま味(出汁・発酵・乾物など)を活かす
健康は、一つの調味料をやめることで得られるものではなく、日々の選択と習慣の積み重ねで築かれていきます。今日から少しずつ、自分と家族の体に合った「ちょうどいい塩加減」を見つけていきましょう。